こんちゃ映画好きtakaarです
今回の映画は第76回カンヌ国際映画祭でグランプリ パルムドールを受賞したミステリー「落下の解剖学」。『ヴィクトリア』の女性監督ジュスティーヌ・トリエ作品。夫が雪山の自宅から落下し不審死してしまう。その疑惑が妻にかけられ無罪を証明するため法廷で争うミステリー。ポスターもあの名作「ファーゴ」を連想させるヴィジュで期待が高まるぅ。ってことで感想を
作品情報
- 原題:落下の解剖学(Anatomie d’une chute)
- 監督:ジュスティーヌ・トリエ
- 脚本:ジュスティーヌ・トリエ
- 製作:マリー=アンジュ・ルシアーニ、ダヴィド・ティオン
- 出演者:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ、サミュエル・タイス、ジェニー・ベス
- 撮影:シモン・ボーフィス
- 配給:フランス:La Pacte、日本:ギャガ、アメリカ:ネオン
- 公開: 2024年2月23日(日本)
- 上映時間:152分
- 製作国:フランス
あらすじ
人里離れた雪積もる山荘で1人の男が不可解な転落死をした。不可解な死の容疑は作家の妻サンドラ(ザンドラ•ヒュラー)に向けられてしまう。その時現場に居合わせたのは視覚障がいのある11歳の息子(ミロ・マシャド)だけ。サンドラは無実を証明するために法廷で証言するも、証人や検事により夫婦の秘密や嘘、家庭不和も暴かれ疑惑も濃くなっていく。妻の言い分、亡き夫が残した証拠、その狭間でゆれる11歳の視覚障がいの息子。人物の数だけ<真実>が現れる。そこで彼女は、現場にいた11歳の視覚障害の息子に自らの無実を証明させるため裁判の証人にさせる。事故か、自殺か、殺人か真相を巡るスリリングな法廷劇の結末はいかに…
法廷で争いながら解剖されていくのは夫婦の実像
登場する夫婦はともに作家である。奥さんはそこそこ売れてる流行作家、一方の夫は売れない作家。夫は妻に嫉妬し、売れない書けない理由を家事や家庭のことに協力しない妻のせいだと主張し夫婦仲は険悪になっていく。それが原因か夜の営みもない。なんなら妻はバイセクシャルで他の女性とも浮気をしていると夫にも公言していた、ただあくまでも肉体の満足のためだから…と
こんなサバけた妻は女性作家で自分の仕事に集中できるタイプのクリエイター。家のこともアナタにお願いした訳じゃないし、本当にやる気があれば夜中にでも執筆できるし自分次第じゃない、私のせいにしないで!と言い放つ。おっしゃる通りです…。できないことを認められない夫のプライドは傷つき疲弊し病んでいく、精神科のお世話になり精神安定剤を服用しなんとか自我を保っていた、そんな状況のなか転落死してしまう。
こんな状況での不審死。もれなく妻は疑われてしまう。裁判で不利になってしまうかもと思い隠していたことも暴かれさらに追い詰められていく。家庭事情も暴かれ夫婦関係も解剖され、こんな夫婦関係だから夫が不審死したのはやはり妻の犯行ですよね?検察官は饒舌に責め立てる。序盤から中盤にかけては妻が殺したのでは…という流れで裁判は進んでいく
夫婦も長年連れ添っていれば価値観の違いやら、ここだけは許せない!ってなこともいっぱいあって、積年の思いが溜まってくるもの。側からは分からない夫婦の見えない部分も赤裸々に法廷で暴かれていく、しかも公衆の面前で…。夫婦なんて他人に言えないようなことを胸の奥にしまって、なんでもないような顔して暮らしているところもあるもんね…。劇中の盗聴録音の夫婦ゲンカがリアルガチすぎで自分の胸にもグサグサ刺さって痛すぎる…。決して夫婦一緒には観ないでください!〝アンタあの時な!……〟と燻っていた火種が燃えはじめること必死だわ(笑)
愛犬と息子の演技もスゴイ
疑惑を抱えた家族、その一員として愛犬と息子も登場する。実はこの二人が重要なカギを握るアクターでもある。
この愛犬がマジでスゴくて、演技してるんですよ犬なのに!って思うくらいに表情豊かなのだ。どうやったらあんな指導ができるんだろうか?もしかしたら進化したAIなのかしらん?と思うほどの演技を魅せてくれる。クスリを飲んだ時の演技は本当に飲ませてたりしたらと思うとちょい怖いが…
息子も疑念に戸惑う11歳の少年を熱演。ママの言うことが正しいのか、パパは本当は自殺したのかもしれない、もしかしたら事故で落っこちただけかも…。確証がもてないままに誰の言葉を、どの証拠を信じればいいのか?小さな胸は張り裂け溢れる涙が頬をつたう。最後の証人喚問を前に迷い途方に暮れる息子が見守る後見人にこう問う
確信がない時にどうやって真実を決めればれいいの?
後見人は言う、
アナタの見たもの、感じたものをよく考え
どちらが本当なのかを自分で決めるの
真実はアナタの思う通りのこと
そう助言をする。自分で考え答えを出した息子は最後の証言へと向かう。自分の言葉で自分の決めた真実を法廷で証言する。それが真実なのだ自分で決めたのだから。そしてその証言により裁判は結審する
事故か、自殺か、殺人か裁判の結末は映画でご確認を
自分で考え自分で答えを出す。これこそが大事なこと。この映画の伝えたいことはきっとそういうことだと思う。だから真相はグレーのままに終わり、白黒つけないのだろう。モヤモヤは残るけど観たアナタも自分で考えて結論を出すのです、そう言われた気がします
カンヌ映画祭グランプリ パルムドール賞だけあって見応えのあるシリアス法廷ドラマでした。「落下の解剖学」のタイトルをみて、ガリレオみたいに物理的に検証•解剖していくミステリーなのかと思いきや、まったく違う法廷での駆け引きにヒリつく心理戦だった。家族の実情が解剖され、それぞれの登場人物の気持ちを考えると複雑な気持ちになる映画でした。息子ちゃんがやっぱり一番の被害者ですよこれは…
で〜も〜最近の映画って〈想像させて観るものに解釈を委ねる系、白黒つけない映画〉が多くないか?これも流行り?多様性の産物なのか(笑)。モヤるのはいいけどもうちょっと明らかな伏線とか置いといてくれてもいいような気もするのはワイだけなのか?あースカッとする映画が見たい!っと思っている2024年冬でございます🙇♂️ってことで
勝手に評価点
B評価:75点